第10回JCHO地域医療総合医学会の開催にあたって

JCHOの目的は地域医療の創造である

 第10回JCHO地域医療総合医学会のお世話を仰せつかりました。昨年はJCHO発足10周年、そして今回の学会が10回目の記念すべき会となりますが、会長として担当させていただきますこと、身に余る光栄と存じます。

 本学会のテーマは「次世代地域医療の創造〜我らが、明日から」とさせていただきました。従来‘2025年問題’とされてきた年を迎え、今後ますます少子高齢化、就業人口(15〜64才)の減少が加速してゆく中、医療のあり方も目まぐるしく変動する状況になっています。私たち医療に関わる者としても、社会の現状を敏感に察知しつつ、時代のニーズに合った医療を常に意識しながら実践していかなければなりません。そのために、医療の担い手である私たちにこそ、あるべき医療の‘創造’が求められているのではないでしょうか。

 経営学者でもあり、‘マネジメント’の創始者とされる.P.ドラッカーの有名な言葉に、「企業の目的は顧客の創造である The purpose of business is to create a customer」というものがあります。とかく誤解されがちのこの言葉は、決して「顧客の数を増やす」とか「自由勝手に仕事を作り出す」ということではなく、ましてや‘利益の追求’は、存続のための必須条件であるとしても、目的とはされていません。人々の、潜在的であるものも含めたニーズに応え、‘価値’を提供し、十分な満足を与えることによって、新たな、そして幸福な顧客像を実現することとも解釈できます。であれば、「病院の目的は患者の創造である」、さらに、「JCHOの目的は地域医療の創造である」と言っても良いのではないでしょうか?

 一方、常に変わり続けるものもあれば、時代を超えて変わらない真実もあります。私は、あえて皆様に問いたいと思います。医療を生涯の仕事としようと決心した日のこと、覚えていますか?何を目指して、仕事を選んだのでしょう?その日以来、様々なことを学び、経験し、多くの知識や技能を身につけてこられたはずです。そして今もなお、疑問を持ち続ける方々も少なからずいることでしょう。

 今日、考えついたアイデアが、明日からの医療につながるかもしれません。そうして明日から‘次世代’が始まります。次世代をかたち作るのは、何もITや生成AIばかりではありません。どんなに素朴なアイデアであっても、目の前の患者さんに少しでも良かれと発想すること、それが‘次世代’の地域医療の‘創造’になることと信じます。熱意とアイデアに溢れた発表が、皆様の、明日からの、さらに優れた医療の実践に結実することを願っています。

第10回JCHO地域医療総合医学会
  会長 関 根 信 夫
(JCHO東京新宿メディカルセンター 院長)